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京都で食べた朝ごはんが、今年いちばんの朝食だった。
新幹線で京都駅に着いて、ホテルに荷物を預けたら、観光より先に朝ごはんへ向かう。これがわたしたち夫婦の京都旅の流儀です。お寺もいいけれど、その街がいちばん素直に顔を出すのは、たぶん朝の喫茶店。コーヒーの湯気と、店主とお客さんの「おはようさん」のやりとり。あれを浴びてから一日を始めると、京都という街にちゃんと「お邪魔します」と挨拶できた気がするんです。
今回は、わたしたちが京都の朝に通っている老舗6軒をまとめます。明治・大正・昭和初期から続くお店ばかりで、うち5軒は喫茶・珈琲店、1軒は南禅寺の朝粥の名店。コーヒー派の方も、和朝食でしっかり始めたい方も、どこかでふたりの京都の朝が見つかれば嬉しいです(情報は2026年5月時点)。
こんなふたりにおすすめ
- 京都旅の朝を、観光地より先に喫茶店から始めたい
- 長く愛されてきた老舗の空気感を味わいたい
- 朝粥や玉子サンドなど、京都らしい朝ごはんを体験したい
1. イノダコーヒ本店|砂糖とミルクが伝統。京都の朝の象徴
京都の朝といえば、まずはイノダコーヒ本店。これはもう、わたしたち夫婦の中で動かしようがありません。1940年創業、堺町通三条を少し下がった一角に、本館の重厚な佇まいがどっしりと構えています。
朝7時の開店に合わせて到着すると、すでに地元のおじさまたちが定位置に座って新聞をめくっていました。常連客と店員さんの「おはようございます」の声が、開店直後の店内に小さく響いて、空気が温まっていく。あの瞬間に立ち会えるのが、朝イチの特権だと思っています。
「京の朝食」と、砂糖入りのコーヒー
注文するのは、ほぼ迷わず「京の朝食」1,780円。クロワッサン、ハム、スクランブルエッグ、サラダ、季節のフルーツ、ヨーグルト、オレンジジュース、そしてブレンドコーヒー「アラビアの真珠」がワンプレートで運ばれてきます。提供は開店から11時まで。
初めて訪れたとき、夫がブラックコーヒーを頼んだら、店員さんが穏やかに「うちは砂糖とミルクを入れてお出しするのが昔からの伝統なんです」と教えてくれました。ふたりで顔を見合わせて笑って、結局そのまま「アラビアの真珠」をいただきました。これが、ほんのり甘くて、香りが深くて、想像以上に朝に染みる味。それ以来、ブラックを頼むという発想が消えました。
本館の吹き抜けが特等席
本館はローズウッドの壁に、シックなインテリア、そして開放的な吹き抜け。窓際の席に座ると、朝の光がふわっと落ちてきて、コーヒーカップの湯気がきれいに見えます。わたしはこの吹き抜けの席が大好きで、京都に着いた朝はだいたいここから始まる。
営業時間は7:00〜18:00(L.O.17:30)、年中無休。地下鉄烏丸線・東西線「烏丸御池駅」から徒歩5分ほどです。
2. 進々堂 京大北門前|京都最古の喫茶で、ゆっくりめの朝食を
朝のラッシュを少し外して、ゆっくりめに朝食を取りたいふたりに刺さるのが進々堂 京大北門前。1930年創業、進々堂本社(1913年)の流れを汲む、京都最古の喫茶店です。京都大学の農学部正門の真向かいに、しっとりと佇んでいます。
開店は10:00。早朝の喫茶ハシゴから少し時間を空けて、二軒目の朝食、あるいはブランチとして組み込むのがちょうどいいお店です。京阪「出町柳駅」からバスでも歩いてもいけますが、わたしたちは天気のいい日は徒歩20分ほどかけてゆっくり向かいます。鴨川を渡って百万遍方面へ歩く道のりも、京都の朝の一部。
黒田辰秋のテーブルに座る朝
店内に入って息を呑むのは、奥に鎮座する分厚い木の長テーブル。人間国宝・黒田辰秋作の木工で、何十年も使い込まれて飴色に光っています。座った瞬間に、夫が「これは…」と言ったきり手で表面を撫でていました。何百人、何千人もの京大生の朝が染みこんでいるみたいで、わたしも背筋が伸びる感覚がありました。
漆喰の壁、ステンドグラスの窓、低めの天井。全体が「ヨーロッパの大学のカフェ」みたいな雰囲気で、京都の中でもちょっと異質な空間です。
モーニングは10:00から
朝食メニューは、学生限定モーニング500円のほか、一般のモーニングは700〜850円、ブランチセットは780円。わたしはブランチセット、夫はモーニングを頼んで、それぞれパンとコーヒーで小一時間。学生さんが教科書を広げて勉強している横で、わたしたちもゆっくり時間を溶かします。
定休日は火曜日。観光地から少し外れているので混雑しすぎず、朝の京都を「使いに来た」感じが味わえる一軒です。
3. 瓢亭 別館|南禅寺の朝粥は、人生で一度は
京都の朝ごはんで、わたしたちが「これは特別な日に」と決めているのが瓢亭 別館の朝粥。約450年前、南禅寺の門前茶屋として始まった瓢亭の、別館で味わう朝の懐石です。
地下鉄東西線「蹴上駅」から徒歩5分。南禅寺の参道を歩いて、深い緑の中にひっそりと現れる門をくぐります。
瓢亭玉子で、ふたりとも無言になった
朝粥は4,840円(3月16日〜11月30日)、冬季は鶉がゆ4,840円(12月1日〜3月15日)。完全予約制で、前日までに電話で予約が必要です。これだけは絶対に忘れないでください。わたしたちは初回、予約のことを知らずに門前で立ち尽くした経験があります(その日は南禅寺を散策して帰りました…)。
瓢箪型の三段重に、八寸、瓢亭玉子、白粥、葛あん。お粥は熱々で運ばれてきて、葛あんをそっとかけていただきます。圧巻だったのが瓢亭玉子。スプーンで割った瞬間、夫が「あ」と小さく声を出して、中からとろっと出てくる黄身に、ふたりで無言になりました。白身はぷるぷる、黄身はとろり。これが450年磨かれてきた朝の一品なんだと、しみじみと味わいました。
正直に言うと、価格は気軽じゃない
気になる点を正直にお伝えすると、ひとり4,840円という価格は朝食としてはもちろん高めです。完全予約制なので、思い立っての訪問もできません。それでも、節目の旅や記念日の朝に組み込む価値は十分にある、というのがわたしたちの結論。営業時間は4〜11月が8:00〜11:00、12〜3月が9:00〜11:00。定休日は木曜日です。
4. 前田珈琲 室町本店|元呉服屋の建物で、焙煎の香りに包まれる
京都の中心部で「広くてゆっくりできる老舗」を探していて、たどり着いたのが前田珈琲 室町本店。1971年創業、室町本店は1981年から現在の場所で営業しています。
阪急京都線「烏丸駅」、地下鉄烏丸線「四条駅」から徒歩5分。元呉服屋の建物を活かした、約100席の堂々たる店舗です。
店に入った瞬間、焙煎の香り
扉を開けたとたん、コーヒーを焙煎する香ばしい匂いがふわっと包んでくれて、夫が「うわっ」と声を漏らしました。店内にはドイツ・プロバット社の直火式焙煎機が置かれていて、お店全体がコーヒーの香りに満たされています。あの匂いの中で朝食を食べるだけで、もう半分くらい幸せ。
玉子サンドは進々堂のパンで
朝食は7:00〜11:00。クロワッサンサンドセットは1,450円、ふわふわ焼き玉子サンドは1,540円。わたしたちが必ず頼むのが、ふわふわ焼き玉子サンド。これがなんと、進々堂のイギリスパンを使っているんです。京都の老舗同士が手を組んでいる、と知った時、夫と「これはずるい」と笑ってしまいました。
パンは耳ごとふんわり、中の玉子焼きは厚みがあってジューシー。ボリュームも結構あるので、ふたりで1個ずつ頼んで、サンドだけでお腹いっぱいになる日もあります。
営業時間は7:00〜18:00(L.O.17:30)、定休日は1月1日のみ。100席あるので、土日の朝でも比較的入りやすいのが嬉しいポイントです。
5. スマート珈琲店|90年続くホットケーキを、3代目の手で
寺町三条で、わたしたちが「定点観測」している老舗がスマート珈琲店。1932年創業、現在は3代目が店を切り盛りしています。
地下鉄東西線「京都市役所前駅」から徒歩1分。寺町通の商店街を少し北に歩いた場所にある、白い外観が目印です。
朝食メニュー、という枠がない
面白いのが、スマート珈琲店には「モーニングセット」という枠が存在しないこと。朝も昼も夜も、同じメニューが並びます。だからこそ、朝に何を頼むかは完全に自由。わたしたちは毎回、ホットケーキ750円か玉子サンドウィッチ750円かで悩みます。
初代の奥様のレシピを90年以上守り続けているホットケーキ750円。一口食べた瞬間、夫が「これが90年続く味か」と静かに呟きました。素朴で、でも芯のある甘さ。型にとらわれず、ふんわりと焼かれた表面に、シロップとバターがすっと染み込みます。
玉子サンドは塩のみのフワフワ
もうひとつの名物、玉子サンドウィッチ750円。こちらは進々堂の食パンに、塩だけで味付けされたフワフワの玉子焼きを挟んだ一品。マヨネーズも砂糖も入らない、潔いシンプルさです。わたしはこの引き算の美学が大好きで、京都の朝は玉子サンド派になりつつあります。
そして忘れてはいけないのがフレンチトースト700円と自家製プリン600円。プリンは硬めの昔ながらのタイプで、夫が「これだよ、これ」と半分でくれません。
営業時間は喫茶8:00〜19:00。喫茶部分は無休、ランチは火曜定休です。
6. 六曜社珈琲店 一階店|河原町三条角の、自家焙煎ドーナツ
京都の朝ごはんめぐりの締めにおすすめなのが、六曜社珈琲店の一階店。1950年創業、現在3代目の名店です。
ここで一点だけ、間違えやすい注意があります。六曜社には「一階店」と「地下店」があり、朝食目的なら必ず一階店です。地下店はモーニングをやっておらず、開店も12:00から。わたしたちも初回、入口を間違えて地下に降りてしまった経験があります。河原町三条の角にある小さな入口の階段を、上に上がれば一階店です。
モーニングセット650円の満足感
モーニングセットは650円。トースト、ゆで卵、飲み物、野菜ジュースという潔い構成。これがびっくりするほど落ち着く朝ごはんで、価格も含めて「毎朝でも来られる」感覚があります。
店内は木造のレトロな空間に、低音量でジャズが流れています。窓際のカウンター席に座って、河原町三条の交差点を眺めながらゆっくりトーストをかじる時間が、本当に贅沢。
名物・自家製ドーナツは「お昼にもう一度」
もう一つ、ぜひ知っておいてほしいのが名物の自家製ドーナツ200円。ただし、これは12時から提供開始、店内のみ(持ち帰り不可)という、ちょっと面白いルール。朝のモーニングを楽しんだあと、お昼にもう一度六曜社へ足を運ぶ、というのがわたしたちの密かな贅沢です。
歯を入れた瞬間、油の香ばしさと素朴な甘みが口に広がって、ふたりで「これが70年続く理由だね」と頷きました。ふわっとした生地ではなく、しっかり噛みごたえのある昔ながらのドーナツ。1986年から始めた自家焙煎のコーヒーとの相性が完璧です。
朝の散歩で六曜社のモーニング、午前中に近所を散策、お昼前に戻ってドーナツとコーヒー。これで河原町三条の半日が完成します。
営業時間は一階店8:30〜22:30、定休日は水曜日です。
京都の朝ごはん、6軒のまとめ
振り返ると、今回ご紹介した6軒は、創業順に並べると瓢亭(約450年)、進々堂(1930年)、スマート珈琲店(1932年)、イノダコーヒ(1940年)、六曜社(1950年)、前田珈琲(1971年)。京都の昭和初期からの喫茶文化と、何百年も続く老舗の懐石が、ほぼ徒歩圏内に集まっているのが京都の凄みだと、改めて思います。
わたしたちの組み合わせ案
京都に1泊2日で行くなら、朝ごはんは2軒選ぶことになります。わたしたちのおすすめの組み合わせはこの3パターン。
- 初日:イノダコーヒ本店、2日目:スマート珈琲店(中京区の老舗喫茶を堪能)
- 初日:瓢亭 別館(要予約)、2日目:六曜社一階店(特別な朝粥と気軽な街喫茶)
- 初日:進々堂 京大北門前、2日目:前田珈琲 室町本店(コーヒー深堀り旅)
どの組み合わせでも、京都という街の歴史と、街角の小さな日常が、朝ごはんの中に溶けています。
気になったところも正直に
正直にお伝えすると、瓢亭 別館の朝粥は完全予約制で、当日の思いつきでは入れません。前日までに電話で予約必須です。また価格も4,840円と、朝食としては気軽ではありません。
スマート珈琲店と六曜社は土日の朝は混雑することがあるので、開店直後の到着がおすすめ。六曜社の「一階店」と「地下店」の取り違えにもご注意ください。
あと、開店時間にも少し注意。進々堂 京大北門前は10時開店なので、早朝から動きたい方には少しゆっくりめ。六曜社の自家製ドーナツは12時から提供開始で、朝のモーニングセットには付きません。「ドーナツも食べたい」というふたりは、お昼に再訪する計画がおすすめです。
京都旅の宿選びについて
朝ごはんを楽しむためには、徒歩圏内に宿を取るのが正解です。今回ご紹介した6軒は中京区・左京区に集中しているので、四条烏丸〜河原町エリア、または岡崎・南禅寺エリアに宿を取るのがわたしたちの鉄板です。
わたしたちが京都旅で愛用している宿選びのサイトは、用途で使い分けています。
- ハイクラス志向の旅なら一休.comでラグジュアリー宿を比較
- コンドミニアム派や朝食付きプランはじゃらんでプラン比較
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朝ごはんの店から徒歩10分以内の宿を選んでおくと、朝の散歩も含めた「ちょうどいい」京都旅になります。
まとめ|京都の朝は、観光より先に喫茶店から
京都旅で「朝何をしようか」と迷っているふたりに、いつも同じことを伝えています。観光地に行く前に、まず老舗の喫茶店で朝を始めてみてほしいと。
イノダのアラビアの真珠、進々堂の黒田辰秋の長テーブル、瓢亭の朝粥、前田珈琲の焙煎の香り、スマート珈琲店のホットケーキ、六曜社のモーニングと午後のドーナツ。どれもが、京都という街が大切に守ってきた「朝の風景」そのものです。
夫はこの取材から帰ってきたあと、家でホットケーキを焼き始めました。スマート珈琲店の味は出せないけれど、あの朝の感覚を再現したかったらしい。それくらい、京都の朝は記憶に残ります。
ふたりで京都に行くなら、ぜひ朝ごはんから旅を始めてみてください。きっと、その日一日の京都の見え方が変わるはずです。

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