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一言で言うと、「何もしない贅沢」を教えてくれたホテルだった。
大手町のオフィス街のまっただなかに、こんな静かな場所があるなんて。アマン東京で過ごした一泊は、わたしたちの「東京のホテル」のイメージをがらっと変えてしまった。チェックアウトのあと、ふたりとも「もう一泊したかったね」と口をそろえた。そういうホテルだった。
これから書くのは、到着からチェックアウトまでの約21時間の記録。良かったことも、気になったことも、ぜんぶ正直に書く。
こんなふたりにおすすめ:
- 記念日や特別な日に、とびきり静かなホテルで過ごしたい
- 東京にいながら「和」の空気を感じたい
- 全室スイートという言葉に心が動く
アクセス・到着まで
アマン東京は、大手町駅に直結している。東京メトロの改札を出てから、エレベーターを使って迷わずたどり着ける。大手町タワーの上層階がホテルになっている。
わたしたちは東京駅からタクシーで向かった。5分もかからなかった。ただ、大手町タワーの入口がいくつかあって、最初は少しだけ迷った。「ホテルの車寄せどこ?」と夫がスマホを見ながらうろうろしていたのは、ここだけの話。
車寄せにたどり着くと、すぐにドアマンの方が出迎えてくれた。荷物を預けて、専用のエレベーターへ案内される。33階のボタンを押すと、エレベーターがすーっと上がっていく。数字がどんどん増えていくのを見ながら、「これから始まるんだな」と少しだけ緊張した。
33階ロビー|空気が変わる瞬間
エレベーターのドアが開いた瞬間、空気が変わった。
オフィス街のざわめきが完全に消えて、しんとした和の空間が広がっていた。
まず驚いたのは、天井の高さ。見上げると、はるか上まで吹き抜けになっている。木と紙と石でつくられた空間が、まっすぐ空に向かって伸びている。行燈のようなやわらかい照明が、和紙を通したあたたかな光を落としていた。
「ここ、本当に大手町?」と思わずつぶやいた。
夫は天井を見上げたまま、しばらく動かなかった。「これは……すごいね」とぽつり。大手町の高層ビルの33階に、こんな静謐な空間がつくれるのかと、ふたりとも圧倒された。
ロビーの床は黒い石。足元がひんやりしている。壁は和紙を貼ったような質感で、生花がさりげなく飾られていた。音がほとんどない。BGMも控えめで、聞こえるのはときおり響くスタッフの足音くらい。都心のホテルで、こんなに静かなロビーは初めてだった。
窓の向こうには、東京のスカイラインが広がっている。高層ビル群を見下ろす景色なのに、不思議と都会の喧騒を感じない。ロビーの空間が「ここは別の場所ですよ」と教えてくれているみたいだった。
チェックイン|ウェルカムジュースに衝撃を受けた
ロビーに着くと、すぐにスタッフの方が迎えてくれた。名前を告げると、フロントカウンターではなくソファに案内された。着座してのチェックイン。これだけで、ちょっと特別な気持ちになる。
やわらかいクッションのソファに腰をおろすと、ウェルカムドリンクが出てきた。
このウェルカムジュースが、ちょっと信じられないくらい美味しかった。
不知火オレンジとクランベリーのジュース。透明感のあるオレンジ色のグラスが、白いコースターの上に置かれた。グラスを持ち上げた瞬間から、柑橘のいい香りがふわっと広がった。
一口飲んで、わたしは思わず「えっ」と声が出た。
甘すぎず、酸味が絶妙で、果実そのものの味がぎゅっと詰まっている。不知火オレンジ特有の濃厚な甘みのあとに、クランベリーのきりっとした酸味が追いかけてくる。果汁がぎゅっと絞られたような密度があるのに、後味はすっと消える。正直、「ジュースってこんなに美味しくなるんだ」と思った。
夫も一口飲んで、しばらく無言。グラスをじっと見つめてから、「……これ、持って帰れないかな」と真顔で言っていた。
冗談じゃなく、今まで飲んだウェルカムドリンクのなかで断トツだった。ホテルのウェルカムドリンクって、正直なところ「まあ普通だよね」くらいの期待値で受け取ることが多い。でもアマン東京のこれは違った。一杯のジュースで「このホテル、ただものじゃない」と確信させられた。
チェックインの手続きはスムーズだった。ソファに座ったまま、タブレットにサインするだけ。参考までに、チェックインは15時から、チェックアウトは12時まで。12時のレイトチェックアウトは、朝もゆっくり過ごせるのでうれしい。
ひとつだけ気になったのは、客室への案内が省略されたこと。スタッフの方がカードキーを渡してくれて、「お部屋は○階でございます」と伝えてくれたけれど、実際に部屋まで一緒に歩いて案内してくれるスタイルではなかった。初めてのアマンだったので、正直、部屋まで案内してもらえたらうれしかったかも。部屋の設備や使い方をその場で説明してもらえると、もっとスムーズに過ごせたと思う。
客室(デラックスルーム 71平米)
靴を脱ぐ、その瞬間から
カードキーをかざして、ドアを開ける。
まず目に入ったのは、「靴を脱いでください」のサイン。アマン東京は、客室に入るとき靴を脱ぐ。玄関のように一段下がったスペースに和風のマットが敷かれていて、スリッパが用意されている。
この「靴を脱ぐ」という行為が、想像以上に効いた。
ホテルの部屋って、どうしても「他人の空間にお邪魔する」感覚がある。でも靴を脱いだ瞬間、ふっと力が抜ける。「ここはわたしたちの場所だ」という気持ちに切り替わる。日本人の感覚に、すっとなじむ設計だと思った。
靴を脱いで一歩入ると、ふわっとひのきの香りがした。
ほんのり、でも確かに。鼻をくすぐるような、やわらかいひのきの匂い。この香りがチェックアウトまでずっと続いていて、部屋に戻るたびに「あ、帰ってきた」と思えた。
段差構造の秘密
その奥に広がる71平米の空間に、わたしたちは言葉をなくした。
まず驚いたのが、部屋の構造。手前のリビングスペースと奥のベッドルームのあいだに、段差がある。リビングが一段低くて、ベッドルームが一段高い。劇場のような2層構造になっていて、どこにいても窓の向こうの東京の景色が見えるように設計されている。
これがすごかった。
ソファに座っても、ベッドに寝転んでも、ダイニングテーブルについても、視線の先にはいつも東京のスカイラインがある。段差のおかげで、リビングからもベッドからも窓が遮られない。ただ広いだけの部屋なら、ベッドに寝転ぶと窓の外は見えないことが多い。でもアマン東京は、ベッドの上に寝転んだままでも、窓の向こうの景色がちゃんと視界に入る。
「この段差、めちゃくちゃ考えられてるね」と夫が感心していた。わたしも同感。空間の使い方が、ほかのホテルとはまるで違う。
リビングには大きなソファとダイニングテーブル。ソファの座り心地がよくて、ここに座ったまま2時間くらいぼーっとしてしまった。テーブルの上には季節のフルーツが盛られていて、さりげないけどうれしい気配り。
和のディテール
壁には和の書が飾られていた。モダンなのに和の空気がしっかり流れている。障子を思わせる格子のデザインが、窓まわりや照明にさりげなく使われている。直線的でミニマルなのに、どこか温かい。和と洋のバランスが、押しつけがましくなく絶妙だった。
照明がまた独特で、部屋全体がやわらかい間接照明で統一されている。天井にダウンライトがぽんぽん並んでいるような部屋ではない。壁や床から光がにじみ出るように設計されていて、部屋全体がほんのりと明るい。夜になると、この照明がさらに映える。東京の夜景と、部屋のやわらかい光が、窓ガラスに重なって見えた。
ただし、この照明、最初はスイッチの場所がわからなくて少し手こずった。タッチパネル式で、慣れるまで「どれがどの照明?」と試行錯誤する時間があった。夫は3分くらい格闘していた。客室案内があったら、ここで助かったかもしれない。
ベッドと寝心地
ベッドはキングサイズ。シーツがぴんと張られていて、マットレスの硬さがちょうどいい。やわらかすぎず、硬すぎず、体が自然に沈む感じ。
夫は「ベッドに倒れこんだ瞬間にわかる、いいやつだ」と言っていた。わかる。
寝心地の良さは翌朝に証明された。ふたりとも、目覚ましより先に自然と目が覚めた。しかも、すっきり。前日の疲れが完全にリセットされている感覚があった。枕もちょうどいい高さで、首が痛くなることもなかった。
リネンの肌触りもよくて、シーツに頬をつけたときの、ひんやりしたすべすべの感触が気持ちいい。夫は「このシーツ、ほしい」と寝ぼけながら言っていた。
洗面台とレプロナイザー
洗面はダブルシンク。朝の支度でバタバタしないのがうれしい。大きな鏡が正面にあって、照明が顔を均一に照らしてくれるので、メイクもしやすい。
そして、ドライヤー。レプロナイザー4D Plus。
わたしはこれにテンションが上がった。美容院でしか使えないと思っていたドライヤーが、部屋に備えつけ。さっそくお風呂上がりに使ってみたら、髪を乾かしたあとのツヤが全然違う。いつもより指通りがなめらかで、毛先がするんとまとまった。
夫は「高いドライヤーってそんなに違うの?」と半信半疑だったけど、わたしの髪を見て「たしかに」と納得していた。「でも家に買うのはさすがに……」とも言っていた。たしかに。でもホテルで使えるだけでも十分うれしい。
ひのきのバスルーム
バスルームに入って、また声が出た。
大きな四角い浴槽。深さがしっかりあって、肩までつかれる。日本の「風呂」の形をしている。そのそばに、檜の風呂桶と椅子が置かれていた。ホテルの浴室なのに、まるで温泉旅館のような設え。
窓は雪見障子のようなデザインで、湯船につかりながら外の景色がちらりと見える。高層階から見下ろす東京の景色を、お風呂に入りながら楽しめる。この贅沢は、なかなか味わえない。
バスアメニティもすべてひのきの香り。シャンプー、コンディショナー、ボディソープ、ボディローション。統一されたひのきの香りが、バスルーム全体を包んでいた。
バスソルトを入れてお湯をためると、ひのきの香りが浴室いっぱいに広がった。お湯がたまっていく間に、もうひのきの蒸気が立ちのぼってきて、深呼吸したくなる。ウェットタオルまでひのきの香り。ホテル全体で「香り」が統一されているのは初めての体験で、これがたまらなく心地よかった。
わたしはバスソルトを溶かしたお湯に30分ほどつかった。窓の外が暗くなって、東京の夜景がぼんやり見える。高層ビルの明かりが、湯気の向こうでゆらゆら揺れている。ひのきの香りに包まれながら、ぼーっとする時間。
これだけで泊まった価値があると思った。
さりげない備品たち
部屋にはBoseのスピーカーがあって、スマホをBluetoothでつなげば好きな音楽を流せる。わたしたちはジャズを流しながら夜景を眺めた。音がやわらかくて、部屋の空間にすっとなじむ。音量を小さくしても、音質がつぶれないのがさすが。
冷蔵庫には東京牛乳が入っていた。夫がさっそく飲んでいた。「こういう地のものが入ってるのがいいよね」と一言。ネスプレッソのマシンもあるので、自分でコーヒーを淹れられる。カプセルは数種類用意されていて、デカフェもあった。
翌朝、窓際のソファでコーヒーを飲む時間が、地味に至福だった。カーテンを開けると、朝日が差し込んできて、シーツがやわらかく光っていた。夫はまだ眠そうにしていたけど、コーヒーの匂いで起きてきた。ふたりで、何も話さずにコーヒーを飲みながら朝の東京を眺める。この時間がたまらなく好きだった。
プールと大浴場|34階の別世界
アマン東京の34階には、宿泊者が使えるプールと大浴場がある。約2,500平米の広さがあって、都内のホテルスパとしては最大級。この階だけで、ちょっとした温浴施設に来た気分になる。
30mプール|昼の表情
わたしたちは到着日の夕方に、まずプールへ向かった。
更衣室で水着に着替えて、プールエリアに出る。その瞬間、思わず足が止まった。
30メートルのプールが、まっすぐに伸びている。天井が高くて、大きな窓から自然光が差し込んでいる。水面が光を受けてきらきら揺れていて、壁面の石が水の反射でゆらゆらと光っている。プールサイドにはデイベッドが並んでいて、白いタオルがきれいに畳まれている。
静かだった。水の音と、ときどき聞こえる空調の音だけ。ほかの宿泊者は1組だけで、ほぼ貸し切り状態。
泳ぐのもいいけど、わたしはプールサイドのデイベッドに寝転がって、水面に反射する光をぼんやり眺めていた。夫は5往復くらい泳いでいた。プールから上がってきた夫が「30メートルあると、ちゃんと泳いだ感じがする」と満足そうにしていた。ホテルのプールって15メートルや20メートルが多いから、30メートルはたしかに贅沢。
キャップが不要なのもうれしかった。これ、地味だけど大きい。キャップを持ってきてない、買い忘れた、で泳げないのは悲しい。髪をまとめるだけで気軽に入れる。
30mプール|夜の表情
夜、もう一度プールへ行った。
これが圧巻だった。
昼間とは、まるで別の場所になっていた。照明が落とされて、水面がゆらゆらと青く光っている。プールの底に仕込まれたライトが、水を内側から照らしていて、幻想的なブルーに染まっている。窓の外には東京の夜景。ビルの光と、プールの青い光が、ガラスに映って重なり合っていた。
昼のプールが「爽やか」なら、夜のプールは「幻想的」。同じ場所なのに、こんなに表情が変わるのかと驚いた。
夫とふたり、プールサイドのデイベッドに座って、しばらく何も話さずに夜景を眺めていた。水面のゆらめきと、遠くに見えるビルの光。BGMもなくて、聞こえるのは水の音だけ。
あの静かな時間は、この滞在でいちばん印象に残っている瞬間のひとつかもしれない。「また来ることがあったら、絶対に夜のプールは外せないね」と帰りに夫が言っていた。同感。
ひのき大浴場
プールの奥に大浴場がある。
脱衣所に入った時点で、もうひのきの香りが漂っていた。客室のバスルームと同じ香り。でも、広い空間に広がるぶん、香りのスケール感が違う。深く息を吸い込むと、体の奥まで香りがしみ込んでくるような感覚。
浴槽は広くて、ひのきの板が貼られた壁に囲まれている。お湯の温度はちょうどよくて、じわっと体が温まっていく。天井が高いので、蒸気がこもらず、呼吸がしやすい。照明は薄暗くて、瞑想でもしたくなるような静けさ。
夫は大浴場がかなり気に入ったようで、1時間近く出てこなかった。
プールサイドで待っていたわたしのところに、ようやく戻ってきた夫。顔が完全にゆるんでいた。「あの大浴場、ずっと入っていたい」と言っていた。ホテルの大浴場で1時間は長い。よっぽど良かったらしい。
「何がそんなに良かったの?」と聞いたら、「香りと、静けさと、お湯の温度。全部ちょうどいい。あと、誰もいなかった」と。貸し切りで大浴場を独占できたのも大きかったみたい。
わたしは大浴場のあとに、パウダールームのアメニティがしっかりしていたのがうれしかった。化粧水、乳液、コットンまでそろっていて、手ぶらで来ても困らない。
ジム
夫は翌朝、ジムも利用していた。24時間利用できるのがありがたい。
テクノジムとライフフィットネスのマシンがそろっていて、窓からの眺めがいいのでランニングマシンが気持ちいいらしい。朝7時ごろに行ったら、誰もいなくて、朝の東京を見下ろしながら走れたとのこと。
わたしはその間、部屋でゆっくりコーヒーを飲んでいた。夫婦旅行でも、別行動の時間があると、合流したときに話すことが増えてちょうどいい。
食事|アルヴァの朝食
翌朝の朝食は、レストラン「アルヴァ」でいただいた。
アルヴァはアマン東京のイタリアンレストラン。日本各地の旬の食材を使ったイタリア料理が楽しめる。朝食は宿泊者向けに、いくつかのセットメニューから選べるスタイル。
レストランに入ると、窓際の席に案内された。朝の光が斜めに差し込んでいて、テーブルの白いクロスが輝いている。窓の外には朝の東京。ビル群が朝日を受けて、少しだけオレンジがかっている。この景色を眺めながらの朝食、というだけで贅沢。
フルーツの盛り合わせ
テーブルに着くと、まずフルーツの盛り合わせが出てきた。スイカ、メロン、マンゴー、ぶどう。ひとつひとつのカットが美しい。均等な厚さ、角のきれいなダイス。見た目だけでも丁寧さが伝わる。
一口食べて、甘みの強さに驚いた。特にメロンが、口に入れた瞬間にじゅわっと果汁があふれて、甘みが舌全体に広がった。スイカも、しゃりっとした食感のあとに甘みがくる。朝からこのフルーツが食べられるだけで、幸せな気持ちになった。
リコッタパンケーキ
メインで頼んだのは、わたしがリコッタパンケーキ、夫がエッグベネディクト。
リコッタパンケーキが運ばれてきた瞬間、「あ、これは間違いない」と直感した。表面がうっすら焼き色がついていて、バターの香りがふわっと立ちのぼる。横から見ると、厚みがしっかりあるのに、ふんわりと膨らんでいる。
フォークを入れた瞬間に崩れるくらいやわらかい。ほとんど抵抗がない。口に入れると、リコッタチーズの風味がほんのり広がった。甘すぎない。チーズのコクと、ほのかな酸味と、小麦のやさしい甘みが重なっている。
メープルシロップをかけると、カリッと焼けた表面にシロップがじゅわっと染みて、中のふわふわと合わさる。この食感のコントラストがたまらない。
わたしは途中で「これ、もう一皿いけるかも」と思ったけど、さすがにやめておいた。でも、最後のひと切れを口に入れたとき、正直もう一枚ほしかった。
エッグベネディクト
夫のエッグベネディクトは、見た目からして美しかった。イングリッシュマフィンの上に、つやつやの半熟卵がのっていて、オランデーズソースが黄金色に輝いている。
夫がナイフで卵を割ると、とろっと黄身が流れ出した。オレンジ色の黄身が、マフィンの上をゆっくり流れていく。
「うん、完璧」と夫がうなずいていた。
分けてもらった一口で、わたしも納得。オランデーズソースの酸味がちょうどよくて、バターの風味はあるのにくどくない。卵の黄身のコクと、マフィンのカリッとした食感と、ソースのまろやかさが一体になっている。シンプルな料理だけど、ひとつひとつの要素の質が高いから、全体の完成度が段違い。
ブラックペッパーベーコン
サイドのブラックペッパーベーコンが、また美味しい。厚切りで、しっかり肉の味がする。カリッと焼けた表面にブラックペッパーがぴりっときいている。脂身は適度に落ちていて、くどさがない。
夫が「このベーコンだけ追加できないかな」と小声で言っていた。気持ちはわかる。パンケーキやエッグベネディクトと一緒に食べても美味しいし、単体でも十分おかずになる。
カプチーノとパンバスケット
カプチーノには、アマンのロゴがラテアートで入っていた。きれいな円弧のなかに、アマンの文字。ちょっとした演出だけど、写真を撮りたくなる。味もしっかり美味しくて、ミルクがきめ細かくて、苦味と甘みのバランスがいい。
バスケットに入ってくるパンは、クロワッサン、ブリオッシュ、デニッシュなど。クロワッサンは外がパリッ、中がふわっ。バターの層がしっかりしていて、ひと口かじると小麦の香りがふわっと広がった。
ひとつだけ気になったのは、パンのラインナップ。甘い系にやや偏っていた。わたしたちはそれでも十分楽しめたけど、バゲットやカンパーニュのようなハード系のパンが好きな人は、少し物足りないかも。
朝食全体を通して、量も質も大満足だった。食後のコーヒーをおかわりしながら、窓の外を眺めて、「この朝食のためだけに泊まりに来たい」と夫が言っていた。大げさに聞こえるかもしれないけど、わたしも同じことを思っていた。
スタッフの先読みサービス
アマン東京で印象に残ったのが、スタッフの「先読み」の力。
チェックインのときから感じていたけど、決定的だったのは夕方の出来事。
わたしたちが外出先でお菓子を買って帰ってきたとき、パティスリーの紙袋を持っているのを見たスタッフの方が、何も言わずにお皿とフォークを部屋に届けてくれた。
「お持ちのお菓子、お皿をご用意しましょうか」とも聞かれなかった。気づいたら、部屋のテーブルにお皿がセットされていた。
このさりげなさに、ふたりで顔を見合わせた。
「すごいね」と夫がぽつりと言った。わたしも同感。「言われる前にやる」がここまで自然にできるのは、本当にすごいと思った。過剰でもないし、わざとらしくもない。ただ、必要なものが、必要なタイミングで、そこにある。
ほかにも、エレベーターで会うスタッフの方がみんな笑顔で挨拶してくれたり、プールから戻るときに冷たいおしぼりをさっと差し出してくれたり。ひとつひとつは小さなことだけど、積み重なると「ここに泊まってよかった」という気持ちがどんどん大きくなる。
チェックアウト|帰りたくない朝
チェックアウトは12時。ゆっくり朝食を食べて、部屋に戻って、窓際のソファでコーヒーを飲んで。それでもまだ時間がある。
夫はジムに行き、わたしは部屋でごろごろしながら、前日に撮った写真を見返していた。バスソルトの残りで、最後にもう一度お風呂に入った。チェックアウトぎりぎりまで部屋でだらだらするのがSaion流。
11時50分、ようやく荷物をまとめて、部屋を出る。最後にもう一度振り返って、窓の外の景色を目に焼きつけた。
チェックアウトはロビーでスムーズに。スタッフの方が「またお待ちしております」と言ってくれた。社交辞令かもしれないけど、なんだかうれしかった。
良かったところ
1. ひのきの香りに包まれる統一感
バスアメニティ、バスソルト、ウェットタオル、大浴場。ホテルのあちこちでひのきの香りがする。この統一感が、滞在全体を通して「アマンにいる」という感覚を持続させてくれた。チェックアウト後も、持ち帰ったバスソルトの香りで思い出がよみがえる。「あ、アマンの匂いだ」と、自宅のお風呂で鼻の奥がきゅっとなった。
2. 客室の段差構造が秀逸
リビングとベッドルームの段差。これのおかげで、部屋のどこにいても東京の景色が楽しめる。ただ広いだけの部屋とは、満足度がまるで違った。71平米という広さを最大限に活かす設計に感動した。靴を脱いで入る仕掛けも含めて、「日本の暮らし」の感覚を取り入れた客室設計は唯一無二だと思う。
3. 34階プールの昼と夜
同じプールなのに、時間帯で表情がまったく変わる。昼は開放的で爽やか、夜はムーディーで幻想的。30メートルの長さがあるので、ちゃんと泳げる。2回行かないともったいない。キャップ不要なのも気軽でいい。
4. ウェルカムジュースの衝撃
不知火オレンジとクランベリーのジュース。たかがウェルカムドリンクと思っていたら、人生で一番美味しいジュースだった。チェックインの瞬間から「ここは違う」と感じさせる力がある。あの一杯で、滞在への期待値が一気に上がった。
5. スタッフの先読みサービス
パティスリーの袋に気づいてお皿を用意してくれたエピソードに象徴される、先回りのおもてなし。押しつけがましくなく、自然体。聞かれる前に、必要なものがそこにある。これがアマンのサービスなのかと感心した。
気になったところ
1. WiFiが不安定だった
客室のWiFiが、時間帯によって不安定になることがあった。夜、夫がスマホで動画を見ていたら途中で止まったらしい。わたしもSNSに写真をアップするとき、少し待たされた。仕事で使う場合は、モバイルルーターがあると安心かも。
2. 客室案内がなかった
チェックイン時に客室まで案内してもらえなかった。カードキーを受け取って自分で部屋へ向かうスタイル。初めてだと、部屋の設備の使い方がわかりにくいかもしれない。わたしたちは照明のタッチパネルに少し手こずった。次に行くなら、チェックイン時に「照明の操作方法を教えてください」と聞くと思う。
3. 朝食のパンが甘い系に偏る
バスケットのパンが、クロワッサンやブリオッシュなど甘めのものが中心だった。バゲットやカンパーニュのようなハード系が好きなふたりとしては、もう少し選べるとうれしかった。ただ、クロワッサン自体の味はとても良かったので、甘い系が好きな人なら気にならないと思う。
基本情報
| ホテル名 | アマン東京 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都千代田区大手町1-5-6 大手町タワー |
| アクセス | 東京メトロ 大手町駅直結 |
| チェックイン | 15:00 |
| チェックアウト | 12:00 |
| 客室数 | 全84室(全室スイート) |
| 最小客室面積 | 71平米(デラックスルーム) |
| 主な施設 | アルヴァ(イタリアン)、武蔵 by アマン(鮨)、ザ・ラウンジ by アマン、ザ・カフェ by アマン、ラ・パティスリー by アマン東京、プール(33-34階・30m)、大浴場、スパ、ジム(24時間) |
| スパ営業時間 | 6:30〜22:00 |
| 電話 | 03-5224-3333 |
わたしたちは一休.comで予約しました。プランによって特典が異なるので、比較してみてください。
まとめ|また行くか?
また行く。間違いなく。
アマン東京は、「何かをする」ホテルではなかった。もちろんプールも食事もすばらしい。でも、いちばん贅沢だったのは「何もしない時間」だった。
窓際のソファに座って、ひのきの香りのなかで夜景を眺める。Boseのスピーカーから小さくジャズが流れている。夫がコーヒーを淹れてくれて、ふたりで黙って外を見る。
その時間がたまらなく良かった。
33階のロビーでエレベーターが開いた瞬間から、チェックアウトで「またお待ちしております」と言われるまで。大手町という場所にありながら、ここだけ時間の流れが違う。東京のど真ん中で、こんなに静かに過ごせる場所はほかにないと思う。
WiFiの不安定さや客室案内の省略、パンのラインナップなど、気になる点がゼロではない。でも、それを差し引いても余りある体験がここにはある。ウェルカムジュースの一杯から始まって、ひのきの香りに包まれた一泊が、今でもふとした瞬間に思い出される。
帰りの電車のなかで、夫が「次は武蔵のお鮨も食べたいね」と言った。わたしは「バスソルト、家用に買えないかな」と返した。
ふたりとも、もうすでに次のことを考えている。
そういうホテルだった。

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