万平ホテル宿泊記|リニューアルで変わったこと、変わらなかったこと【2026】

万平ホテル アルプス館(公式画像)

※本記事にはアフィリエイトリンクが含まれます。わたしたちが実際に予約・宿泊した際の体験をもとに書いています。

COMPARE / 3館の違い

万平ホテル、3つの館の個性

どの館に泊まるかで、滞在の印象がまるで違うのが万平の奥深さ。

アルプス館

1936 / 本館

  • 建築昭和初期の名建築
  • 客室クラシック仕様
  • 特徴ジョン・レノン定宿
  • 雰囲気歴史と静けさ
宿泊記念にと選ぶなら迷わずここ。壁も床も「時間」を纏っています。

愛宕館

2024 / 新装

  • 建築リニューアル棟
  • 客室モダン&快適
  • 特徴広めのバスルーム
  • 雰囲気上質で軽やか
初万平なら、まずここが安心。設備の新しさと歴史の風格のいいとこ取り。

碓氷館

1917 / 歴史

  • 建築和洋折衷の趣
  • 客室落ち着いた造り
  • 特徴文豪の常宿として
  • 雰囲気静謐で文学的
読書の旅なら、ぜひ碓氷館で。時間がゆっくり流れる感覚があります。

CHART / Saion Original

目次

一言で言うと、「変わらないために、ここまでやるのか」と思うホテルだった

軽井沢の万平ホテルが大きなリニューアルを終えたと聞いてから、ずっと気になっていました。

1894年に生まれた宿。ジョン・レノンが家族で通った宿。昭和の空気がそのまま閉じ込められた、あの宿。

正直に言うと、少しこわかったんです。

リニューアル、という言葉の響きが。

ピカピカになった木目。つるんとした新しいタイル。どこのホテルに行っても見かける、あの「今っぽい」内装。もしも万平ホテルがそうなっていたら、わたしたちはきっと、静かに肩を落として帰ってきたと思います。

結論から言います。全然、そんなことはありませんでした。

むしろ、「変わらないために、ここまでやるのか」と、何度も夫と顔を見合わせました。そして同時に、「新しくなったことで、こんなに居心地がよくなるんだ」とも感じました。

この記事は、4月中旬の2泊3日で、リニューアル後の万平ホテルに泊まってきたわたしたちの、できるだけ正直な宿泊記です。

こんなふたりにおすすめ

  • 軽井沢の「クラシックホテル」に一度は泊まってみたい
  • 新しさよりも、時間が積み重なった場所が好き
  • 温泉もいいけれど、それ以上に「空気」で選びたい
  • GW前後の軽井沢で、少しだけ贅沢な夜を過ごしたい

リニューアルって聞いて、正直少し怖かった

万平ホテルが2023年のはじめに全館休館に入ったのは、わたしたちも知っていました。

そのあとソフトオープンを経て、2024年の秋にグランドオープンしたこと。創業から130年の節目に合わせて生まれ変わったこと。愛宕館という棟が新築されて、塩沢温泉が引かれたこと。

ニュースとしては頭に入っていたのですが、実際に自分たちの足で確かめるまでは、ずっと「行くのがこわい」という気持ちのほうが勝っていました。

万平ホテルは、夫が若い頃に一度泊まったことのある場所でした。わたしは初めて。

「あの木目の廊下とか、暗めのラウンジとか、あの空気のまま残っていてほしいんだけどね」

軽井沢駅に向かう新幹線のなかで、夫がぽつりと言いました。わたしは、その「あの空気」がどんなものなのか、少し不安になりながら相槌を打ったのを覚えています。

結果的に、わたしはその心配を完全に手放すことになりました。むしろ、こちらが少しうるっとしてしまうほどに。

軽井沢駅から万平ホテルまで:たった5分の距離が、別世界の入り口

JR軽井沢駅からタクシーで万平ホテルまでは、だいたい5分。2キロほどの距離です。

無料の送迎バスも予約制で出ているのですが、わたしたちは4月中旬の空気を少しでも長く浴びたくて、あえてタクシーにしました。結果的にそれは正解で、旧軽井沢の細い道をゆっくり進む数分間が、もう旅のはじまりになっていました。

桜がまだ残っていました。白樺の新芽が、午後の光で透けていました。

「ここ、去年の夏に通った道だ」と夫が言いました。

わたしたちは「あ、あそこ」「ここも」と指差しながら、数分で万平ホテルの前に着きました。

タクシーを降りて見上げた瞬間、ふたりとも黙りました。

アルプス館の、あの和洋折衷の外観。焦げ茶色の木の柱と、クリーム色の漆喰。低い屋根と、深い庇。昭和11年に建てられた国登録有形文化財の建物が、リニューアル前の写真で見ていた姿と、ほとんど何も変わらずにそこに立っていました。

「変わってない」と夫がつぶやきました。

のちにスタッフの方が「ファサードの色合いは、忠実に再現するように丁寧にやり直したんですよ」と教えてくれました。建物全体をジャッキで持ち上げて、基礎から補強し直したとも。耐震のためとはいえ、「見た目を変えないために、そこまでやったのか」と、わたしたちは言葉を失いました。

変わらなかったもの:1894年の看板、昭和のすりガラス、猫足のバスタブ

この記事でまず先に書きたいのは、「変わらなかったもの」のことです。

新しくなったホテルの記事で、最初に語るのが「変わらなかったこと」というのも変ですよね。でも、万平ホテルという宿の本当の魅力は、間違いなくそこにありました。

玄関の木製看板:1894年からずっとそこにある

玄関にかかっている木製の看板。これが、1894年、つまり創業のときからずっとここに掛かっているものだと知ったのは、チェックインの少しあとでした。

130年以上、風雨をくぐってきた看板です。文字のへこみも、木の目も、磨耗した角も、全部そのまま。

「さわってもいいのかな」と思って指先をそっと近づけて、でも結局触れられずに手を引いたのを覚えています。130年という時間の重さは、たぶんわたしの指先では受け止めきれないと感じたからです。

昭和初期のすりガラスと、丸いペンダントライト

ロビーを抜けて廊下を進むと、天井から丸いペンダントライトがぽつ、ぽつと下がっていました。乳白色のガラス。昭和初期のものがそのまま使われているそうです。

電球のオレンジが、すりガラス越しに柔らかくにじんで、廊下全体をぼうっと包んでいました。

わたしは、スマホの写真ではあの光をどうしても再現できませんでした。何度撮っても、実際に目で見たときのあの「少し暗いのに、ちゃんと見える」感じが写らない。

「この光、夜のほうがもっといいと思う」と夫が言ったので、その日の夜、わたしたちは夕食のあとにわざと廊下を遠回りして、もう一度あの光を見に行きました。

メインダイニングの折上げ格天井とステンドグラス

メインダイニングの天井を見上げた瞬間、夫の足がぴたりと止まりました。

折上げ格天井、というそうです。わたしは名前を初めて知りました。木の梁と梁のあいだが、マス目のように組まれていて、そこに和の文様がそっと入っています。

そして壁面に大きなステンドグラス。鵜野澤秀雄さんという作家の方の作品だと、席に案内されたあとにスタッフの方が教えてくれました。緑と赤と黄色のガラスが、夕方の光で床に落ちて、まるで絨毯のようでした。

「これは、ただのリニューアルじゃないね」

夫がそう言ったのが、夜のメインダイニングでした。

アルプス館の猫足バスタブ

わたしたちがこの日泊まったのは、アルプス館のお部屋でした。リニューアルで水回りは全面刷新されたと聞いていたのですが、中に入った瞬間、わたしは思わず「あ」と声を出してしまいました。

白い猫足のバスタブが、そのままそこにあったからです。

新築の愛宕館のほうが温泉付きで、今のいちばんの目玉なのはわかっていました。でも、わたしはどうしてもアルプス館に泊まりたくて、夫にお願いして予約を取ってもらっていました。

理由のひとつが、この猫足バスタブでした。

蛇口まわりは新しくなっていましたが、バスタブそのものは継承されているとのこと。白い琺瑯の表面は、よく見ると使い込まれた味があって、それがまたよかったんです。ピカピカではなくて、ちゃんと「時間が流れた跡」がありました。

夫は「水回りが新しいのは正直ありがたいね」と笑っていました。わたしもです。残すところと、変えるところ。そのバランスが、本当に丁寧でした。

軽井沢彫の家具、そしてあの和洋折衷の空気

客室の家具は、軽井沢彫のものが並んでいました。

桜の花と葉が彫られた木のテーブル。同じ文様のドレッサー。布張りの椅子の脚にも、小さく葉っぱの彫刻が入っていました。

部屋のサイズ自体はそこまで広くはないのですが、昭和初期の空気がそのまま閉じ込められていて、わたしたちはスーツケースを開けるのも忘れて、しばらく椅子に座って室内を眺めていました。

「ここ、写真じゃなくてちゃんと来てよかったね」と夫が言いました。

わたしも、全く同じことを考えていました。

変わったもの:愛宕館と、塩沢温泉という新しい軸

さて、ここからは「変わったこと」の話です。

今回のリニューアルでいちばん大きく変わったのは、愛宕館が完全に新築されたことと、万平ホテルの歴史上はじめて温泉が導入されたこと。この2つでした。

新築された愛宕館を、あえて見学させてもらった

わたしたちの宿泊はアルプス館でしたが、チェックインのあと、せっかくなのでスタッフの方に愛宕館の空き部屋を少しだけ見せていただきました。

廊下の印象は、アルプス館とはまったく違いました。新しい建物特有の、ピンと張った空気。でも、内装のトーンは決して浮いていなくて、濃い木の色と落ち着いたファブリックで、ちゃんと「万平ホテル」の続きになっていました。

愛宕館は全30室。そのうち17室がプレミア(温泉付)という客室で、45平米。10室がテラス付きのプレミア。ほかに、グランドプレミアと愛宕スイート、そして最上位の万平スイートがそれぞれ1室ずつあります。

見せていただいたのはプレミアのお部屋だったのですが、いちばん印象に残ったのはやはりお風呂でした。

内風呂に塩沢温泉が引かれていて、24時間いつでも湯を溜めて入ることができます。お湯の色は無色透明。蛇口をひねると、ほのかに温泉特有のにおいが立ちのぼりました。

「これは、ちょっとうらやましい」と夫がぼそっと言ったので、わたしたちは次の予約のことをもう少しだけ真剣に考えはじめました。

塩沢温泉という選択

万平ホテルに引かれている温泉は、南軽井沢の塩沢温泉から来ているお湯です。泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉、いわゆる重曹泉。pH6.7。

難しい言葉はさておき、実際にお湯に手を入れさせてもらったときの感想は、「つるつるする」の一言でした。肌がちゃんと喜んでいるのがわかる、あのお湯です。

ひとつだけ先に伝えておきたいのですが、万平ホテルには大浴場も露天風呂もありません。温泉が引かれているのは愛宕館の客室内風呂だけです。

ですから、「万平ホテル=温泉宿」と身構えてしまうと、ちょっと違います。あくまで、「クラシックホテルに、客室の温泉という新しい選択肢が加わった」と考えるほうが、たぶん実像に近いです。

わたしたちは今回アルプス館に泊まったので温泉は利用しませんでしたが、もし次に行くなら、愛宕館のプレミア(温泉・テラス付)を選びたいと、ふたりの意見がぴったり一致しました。

細部のアップデート:リファドライヤー、モルトンブラウン

客室に戻って、細かいところも少しご紹介します。

全客室にリファのドライヤーが入っていました。アメニティはモルトンブラウン。わたしはあのオレンジ系の香りが好きなので、こういうところでちょっとテンションが上がってしまいます。

歴史あるクラシックホテルに、ちゃんと今のアメニティが置かれている。「昔のまま」ではなく「今のわたしたちが泊まって心地いい」に仕立て直されている感じが、全体を通してとても良かったです。

カフェテラスの時間:ジョン・レノン直伝の、あの紅茶

万平ホテルの話をするうえで、どうしても外せないのがカフェテラスです。

宿泊者でなくても利用できるオープンな空間で、わたしたちも今回、2日間で合計3回も通ってしまいました。

ジョン・レノンが好んで座った、あの席

初日、チェックインのあとに少し時間があったので、まっすぐカフェテラスに向かいました。

お店の奥のほう、窓際に、ちょっと特別な空気をまとった席があります。そこはジョン・レノンが、家族で軽井沢に滞在していた4年間、好んで座っていたと言われている席です。

1976年から1979年、亡くなる前の年まで。妻のオノ・ヨーコさん、幼い息子のショーンさんと一緒に、毎夏軽井沢にやってきて、この席でお茶を飲んでいた。

わたしたちはその席には座れませんでしたが、斜め向かいの席に案内されて、同じ方向の景色をぼんやり眺めていました。窓の外は、白樺と、まだ芽吹きかけの広葉樹。光の角度と空気の冷たさが、50年前の夏とは全然違うはずなのに、なぜか「この景色、ジョンも見てたんだな」と思うと、少し背筋が伸びました。

John’s favorite royal milk tea と、伝統のアップルパイ

メニューの中に、「John’s favorite royal milktea」という名前の紅茶がありました。

これはもともと、約50年前にジョン・レノンが作り方をこのホテルに伝えたといわれているロイヤルミルクティーで、いまも当時の淹れ方で提供されています。1,495円。

一緒に注文したのは、伝統のアップルパイ。1,725円。長くこのカフェテラスの顔としてあるメニューです。

ロイヤルミルクティーは、わたしが最初の一口で「あ、これは濃い」と声を出してしまったくらい、しっかりとした味でした。渋さと甘さのバランスが、今どきの「軽やかな」紅茶とはまるで違います。たぶん、人によっては「濃すぎる」と感じるかもしれません。わたしは、2日目には完全にこの味にハマっていました。

アップルパイは、温かいまま出てきました。表面のパイ生地は香ばしくて、中のりんごは少しシナモンが効いていて、上に添えられていた冷たいバニラアイスがゆっくり溶けていくのを、わたしたちはほとんど無言で眺めていました。

「これを、ジョン・レノンも食べてたのかな」と夫が言いました。

わたしは「どうだろうね」と笑いました。本当のところはわかりませんが、そう思ってしまうくらいに、ちゃんと「昔からあるお菓子」の顔をしていました。

フロント横のステンドグラスと、あのアップライトピアノ

カフェテラスのあと、ロビーをゆっくり歩いていて気づいたのが、フロント横のステンドグラスでした。これも、リニューアル前からずっとここにあったものです。夕方の光が入ると、床に色のついた影が落ちます。

そしてその近くに、ひっそりと置かれていたアップライトピアノ。ジョン・レノンが滞在中に弾いたことがあるという、まさにそのピアノです。

柵もガラスケースもなく、ただ静かに置かれていました。

鍵盤を見つめていたら、なんだか不思議な気持ちになりました。ここで子どものショーンさんが走り回っていたのかもしれない。あの紅茶の味を家族に伝えた人が、ここで鍵盤に触れたのかもしれない。

そういう「歴史との距離の近さ」が、万平ホテルのいちばんの底力なんだと、わたしはたぶんそこで理解しました。

子猫救出の壁、という小さな物語

もうひとつだけ、カフェテラスの入口まわりで印象に残った話を。

入口横の壁の一部が、ちょっとだけ不思議な切り方をされています。これはその昔、ジョン・レノンが壁の中から子猫の鳴き声を聞きつけて、「この子を助けたい」と壁を切ってでも救い出した、というエピソードが残っている場所です。

嘘みたいな話ですが、本当の話だそうです。

わたしはこの話を知ったとき、なんだか胸がぎゅっとなりました。ロックスターとしての顔ではなく、子猫の鳴き声に耳を傾けて壁を切る、ひとりのやさしい人としてのジョン。その痕跡が、こんな静かな軽井沢の宿にちゃんと残っている。

観光名所というよりも、「小さな物語の置き場所」として、この壁のことはとても好きになりました。

メインダイニング「欅(けやき)」:新しい顔の、でも安心できる味

夜は、メインダイニングのディナーコース「欅」をいただきました。

リニューアル後に新しい料理長が就任して、生まれ変わったコースです。21,000円にサービス料15%、という価格帯で、正直に言えば、軽井沢の夕食としては「少し勇気のいるライン」でした。

でも、あの折上げ格天井とステンドグラスの下で食事をするというだけで、もう体験料が半分含まれている気がしていました。

信州の食材と、ホテル伝統のソース

前菜から順に、信州の食材が丁寧に組み上げられていきました。春野菜のテリーヌ、信州サーモン、地元の根菜を使った温かいスープ。ひとつひとつのお皿に、長野と万平ホテルの両方の名前が書いてあるような、そんな印象でした。

メインの肉料理には、ホテルに昔から伝わる、というソースが添えられていました。新しい料理長のもとで、昔からの味をベースに少しずつ調整されているとのこと。

「これは、ちゃんと万平ホテルの味だね」と、普段はわりと辛口な夫が言っていました。

わたしもうなずきながら、ふと気づくと、テーブルの横でスタッフの方がそっとグラスに水を足してくれていました。話しかけてくる感じではなく、こちらの会話を邪魔しない距離感で、必要なときだけ静かに動いてくれる。そういうサービスが、この夜のいちばんの贅沢だったのかもしれません。

ザ・バーでの一杯

ディナーのあとは、リニューアルで生まれ変わった「ザ・バー」に少しだけ立ち寄りました。

シグネチャーカクテルが2,200円。わたしはジンベースの一杯、夫はウイスキー。木のカウンターに肘をつきながら、ふたりで今日見たもの、感じたことをぽつぽつ話しました。

バーのサイズ自体は大きくありません。でも、大きくないからこその落ち着きがあって、わたしたちのようなゲストが、低い声で旅の余韻を共有するのにちょうどいい場所でした。

HISTORY / 130年

万平ホテル、130年のヒストリー

ひとつの宿が見てきた時代の厚み。泊まることは、歴史の続きに参加すること。

1894

創業

佐藤万平が軽井沢で旅館業を開始。日本人向けの宿として歩み出しました。

1902

外国人観光客の受け入れ

軽井沢を訪れる宣教師や外国人に向けて、西洋式の宿泊サービスを本格化。

1936

アルプス館 竣工

現在の本館にあたる「アルプス館」が完成。昭和初期のクラシック建築の名作として知られるように。

1955

戦後の復興期

占領終了後、国内外の要人が訪れる「軽井沢の顔」としての地位を確立。

1976–79

ジョン・レノン ファミリーの夏

夏を家族で過ごすため4年連続で滞在。「軽井沢で一番静かな場所」と評したエピソードは有名。

2003

登録有形文化財に

アルプス館が国の登録有形文化財に指定。建物自体が観光資源となりました。

2024

大規模リニューアル完了

歴史的意匠を残しつつ、現代の快適性を融合。愛宕館を中心に新しい万平の時代が始まりました。

CHART / Saion Original

翌朝:朝食、そして旧軽井沢の散歩

翌朝は、すこし早めに目を覚ましました。

窓を開けたら、想像以上に寒くて、思わず「うわ」と声が出ました。4月中旬の軽井沢、朝は5度を下回ることもあります。あらかじめ持ってきていた薄手のダウンとストールが大活躍でした。

メインダイニングの朝食

朝食は、夜と同じメインダイニング。折上げ格天井の下で、今度は朝の光を浴びながらの食事です。

和朝食と洋朝食が選べるスタイルで、わたしは洋、夫は和にしました。

わたしの洋朝食は、オムレツが本当に美味しかったです。表面がすべらかで、中はとろっとしていて、塩加減が絶妙でした。添えられていたハッシュドポテトもよかったのですが、あのオムレツの印象があまりにも強くて、ハッシュドポテトは正直ほとんど記憶に残らなかったくらいです。

夫の和朝食は、焼き魚と小鉢が丁寧に並んでいて、「これ、毎朝これでいいなあ」と彼はつぶやいていました。ごはんが少しかためで、それが逆に好みだったみたいです。

もうひとつ正直に書きます。朝食の紅茶を頼んだのですが、これがちょっとわたしには渋めでした。カフェテラスのロイヤルミルクティーが濃いのは「美味しい濃さ」だったのですが、朝食の紅茶の渋さはもう少し軽くてもいいかな、と個人的には思いました。夫は「気にならなかった」と言っていたので、完全に好みの問題だとは思います。

旧軽井沢銀座から、聖パウロカトリック教会へ

朝食のあと、わたしたちは旧軽井沢を散歩しました。

万平ホテルの玄関を出て、ゆるやかな坂を5分ほど下ると、旧軽井沢銀座通りに出ます。朝のまだ早い時間だったので、ほとんどのお店はまだ開いておらず、通りは静かでした。でも、それがとてもよかったんです。昼間の賑わいではなく、「誰かが一日を準備している朝」の空気。

通りから少し入ったところに、聖パウロカトリック教会があります。木造の三角屋根が印象的な、有名な教会です。わたしたちはこの日、運よく中に入ることができて、少しだけ手を合わせてきました。

その後、もう少しだけ足を延ばして、雲場池のほうまで歩きました。池のまわりの新緑がまだ柔らかい時期で、水面に白樺が映っていました。

桜はちょうど終わりかけ、新緑がピークにさしかかる直前。ほんの少しだけ早起きをしたおかげで、わたしたちはその「季節の継ぎ目」みたいな朝を歩くことができました。

良かったところ:4つのポイント

1. 「変わらなかったもの」の圧倒的な存在感

これは何度でも書きたいのですが、万平ホテルの魅力のいちばんの核は、「時間を残す勇気」にありました。

1894年の木製看板、昭和初期のすりガラスのペンダントライト、折上げ格天井、ステンドグラス、猫足バスタブ、軽井沢彫の家具、ジョン・レノンの席とピアノ。ひとつひとつが、リニューアルという大波のなかでちゃんと残されていて、しかもそれらが「飾り」としてではなく「いまも日常として使われている」のがすごかったです。

2. 3つの館がそれぞれ別の物語を持っている

アルプス館、愛宕館、碓氷館。全86室のなかに、3つのまったく違う世界が共存していました。

昭和初期の時間にどっぷり浸かりたいならアルプス館。温泉付きのクラシカルモダンで現代的な快適さを取りたいなら愛宕館。自然に溶け込んでゆったり静かに過ごしたいなら碓氷館。

「次はどの館に泊まる?」という会話が、帰りの新幹線のなかでずっと続きました。こういう宿、なかなかありません。

3. カフェテラスという、誰にでも開かれた歴史

カフェテラスが宿泊者以外にも開かれていることは、万平ホテルの懐の深さだと思います。

宿泊はちょっと予算的に厳しい、という人でも、あの空間と、あの紅茶と、あのアップルパイにはたどりつける。そして一度その味を知ったら、きっと「いつかは泊まってみたい」と思うはずです。そういう「入口」として、カフェテラスは本当によくできています。

4. スタッフの方の距離感

チェックインから、ディナー、朝食、チェックアウトまで、どのスタッフの方も話し方がとても穏やかでした。必要以上に踏み込まないけれど、質問には丁寧に答えてくれる。声のトーンがちょっと低めで、それが館の空気とすごく合っていました。

わたしたちは家族経営の小さな宿のような温かさをイメージしていたのですが、実際はもう少し洗練された、でも冷たくはない、「大人のホテル」の距離感でした。

気になったところ:正直に3つ

完璧な宿というものは、たぶんこの世に存在しません。万平ホテルも例外ではなく、わたしたちが実際に泊まって「ここはちょっと気になったかも」と感じた点を、正直に書いておきます。

1. クラシックホテルならではの、壁の薄さ

アルプス館に泊まった夜、2度ほど、となりのお部屋の扉の開閉音が聞こえました。大きな音ではなく、「あ、となりもいらっしゃるんだな」と感じる程度のものです。会話や物音はほとんど聞こえませんでした。

これはクラシックホテルの宿命のようなもので、リニューアルで完全に消せるものではないのかなと思います。気になる方は、ぐっすり眠るために耳栓を持っていくと安心かもしれません。わたしたちは翌日にはもう慣れて、むしろ「そういう建物の呼吸」として受け入れていました。

2. 客室のタイプによっては、水回りの配置にクセがある

お部屋のタイプによっては、トイレと洗面、バスタブが同じ空間にまとまっている「3点ユニット的」な作りもあります。わたしたちの部屋がまさにそうで、夫婦で同時に使えないのはちょっとだけ不便でした。

歴史ある建物にあとから水回りを通している関係で、現代のホテルのように「トイレと風呂が完全に分かれている」タイプばかりではありません。水回りの分離を重視する方は、予約時に部屋タイプをよく確認してから決めると安心です。

3. ディナーコースの価格感

メインダイニングの「欅」は21,000円にサービス料15%。味もサービスも本当に素晴らしかったのですが、価格としては「毎回気軽に」というわけにはいかないラインです。

記念日や、特別な夜のご褒美として選ぶコース。そう割り切れる方にはまったく問題ありませんし、わたしたちもその夜の体験にはちゃんと納得しています。ただ、2泊3日を考えている方で、1泊は別の手段で夕食を取りたいという場合は、旧軽井沢銀座通り周辺にも選択肢がいくつかあるので、あらかじめ調べておくと気が楽かもしれません。

4月下旬の軽井沢:服装と、ちいさな持ち物リスト

記事のついでに、4月下旬の軽井沢の気候について、わたしたちが泊まって感じたことを少しだけ。

日中は15度前後で、日が差すと「コートを脱いでもいいかな」と思う瞬間もあります。でも、朝晩は一気に冷え込みます。4月20日頃でも、朝は0度〜5度くらいになることがあって、わたしたちが行った日も、ホテルを出た瞬間の空気がきりっと冷たかったです。

持っていってよかったもの:

  • 薄手のダウン、または厚手のコート
  • 厚手のストール(朝晩の散歩に必須)
  • 重ね着用の薄手カーディガン
  • 歩きやすいスニーカー(旧軽井沢の散歩用)

桜は4月中旬に開花して、4月下旬から5月初旬が見頃。新緑のピークはだいたい4月20〜25日頃でした。わたしたちが行ったのはまさにその時期で、季節の継ぎ目の美しさにしっかり当たりました。GWに行く方は、桜の残り具合はその年によりますが、新緑はきっときれいだと思います。

基本情報まとめ

ホテル名 万平ホテル(まんぺいホテル)
所在地 〒389-0102 長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢925
創業 1894年(明治27年)
リニューアル 2024年10月2日グランドオープン(創業130周年)
客室数 全86室(アルプス館12室/愛宕館30室/碓氷館44室)
温泉 塩沢温泉(愛宕館全客室の内風呂のみ、大浴場なし)
泉質 ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(重曹泉)、pH6.7
料金の目安 素泊まり2名1泊26,400円〜、朝食付38,800円〜、夕朝食付77,786円〜(※GW期は高騰傾向)
アクセス JR軽井沢駅よりタクシー約5分、無料送迎バスあり(予約制)
周辺 旧軽井沢銀座通り、聖パウロカトリック教会、雲場池、軽井沢ショー記念礼拝堂

※料金は2026年4月時点のものです。シーズン・プランによって変動します。GW前後はとくに高騰しやすいので、早めの予約が安心です。

予約は、いくつかのサイトを見比べて決めました

わたしたちは今回、いくつかの予約サイトを並べて見比べてから決めました。サイトによって部屋タイプの在庫や、朝食・夕食の含まれ方、ポイント還元が少しずつ違ったので、下の4つを順番に開いて、自分たちの日程と予算に合うものを選ぶのがいちばん早かったです。

特にアルプス館の客室は数が12室と少ないので、狙っている方はなるべく早めに日程を決めてしまうのがおすすめです。愛宕館のプレミア(温泉・テラス付)も10室と限りがあるので、GW前後の週末はすぐに埋まっていく印象でした。

MAP / 軽井沢散策

万平ホテル起点、ゆっくり散歩ルート

歩いて回れる距離感がちょうどいい旧軽井沢の魅力を、1枚の地図に。

S
万平ホテル

1
旧軽井沢銀座

2
聖パウロ教会

3
雲場池

4
室生犀星記念館

総距離約3.2km
所要時間約90分
おすすめ午前中の涼しい時間
# スポット Saionメモ
S 万平ホテル フロントで散策マップをもらって出発
1 旧軽井沢銀座 ベーカリーでモーニング購入(徒歩8分)
2 聖パウロ教会 静かな朝の時間がいちばん美しい(徒歩10分)
3 雲場池 池の周りを一周、木漏れ日が気持ちいい(徒歩15分)
4 室生犀星記念館 文学の散歩道で余韻を楽しむ(徒歩12分)

CHART / Saion Original

まとめ:「また来ようね」と、帰りの新幹線で話した宿

チェックアウトのとき、玄関の木製看板をもう一度ちゃんと見てから、わたしたちは外に出ました。

タクシーに乗って軽井沢駅に向かう数分のあいだ、夫が「次はさ、愛宕館にしようか」と言いました。わたしはすぐに「うん」とうなずきました。

リニューアル前を知る夫は、「変わらなかったもの」に感動していました。初めて泊まったわたしは、「時間が積み重なった場所」そのものに心を動かされていました。同じホテルに泊まって、感じた入口は少し違ったけれど、帰り道に出てきた結論はぴったり一致しました。

また来ようね、と。

130年前の木製看板と、昭和初期のガラスのランプと、ジョン・レノンが座った席と、新しく引かれた塩沢温泉。ぜんぶが同じ建物のなかに、無理なく共存している宿。そんな場所は、たぶんそんなに多くはありません。

リニューアルしたからこそ、もう一度会いに行きたくなる。そういう不思議な余韻を残してくれる場所でした。

GWまでに、あるいはGWに、ちょっとだけ背伸びした軽井沢の夜を過ごしたいふたりなら、候補の一番上に置いてみてほしい一軒です。わたしたちは、次の予約のタイミングをすでに相談しはじめています。

画像引用元

アイキャッチおよび本文中の施設画像は以下の各公式サイトより、著作権法第32条「引用」の規定に基づき出典を明記の上で使用しています。

万平ホテル完全ガイド — Saionのシリーズ記事

万平ホテルについて、わたしたち夫婦で書いた5本のシリーズ。ここから気になる入口をどうぞ。

— ここまで読んでくれてありがとう —

旅の予約は一休.comじゃらん楽天トラベルJTBのどれかを見比べて決めています。
同じ宿でもサイトによって特典がちがうので、見比べる5分が結局いちばん早い近道です。

万平ホテルの時間が、ふたりの宝物になりますように
Saion

万平ホテル アルプス館(公式画像)

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